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三条琉瑠@秘姫堂のHP兼ブログ。BLEACHで弓受で徒然なるままに。 新旧十一番隊最愛。角弓・剣弓・鉄弓などパッションの赴くままに製作中。パラレルなども取り扱い中。 ※お願い※yahooなどのオンラインブックマークはご遠慮くださいませ。
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三条琉瑠
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非公開
自己紹介:
明太子の国在住の社会人。
小咄・小説を書きながら細々と地元イベントにサークル出していたり何だり。
弓受なら大概美味しく頂けます。



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ニコペコ/nico peco様
★角弓スキさんに13のお題★をお借りしました。



 何時かは起こりえる未来なら

 「――…ッ、一角、危ないっ!!」

 其の時、君の眸に最後に写るのは僕であればいいと思う

 そして、僕の眸に最後に君が写るのならば


 僕は君に―――


 【題11.隣合わせの死】

 ガ、ギィイイッ――!
金属が削りあう音が、一面に響き渡った。
虚の振り下ろした硬質に変化した腕を遮った藤孔雀が、刃を鳴かす。
火花を散らしながら腕を滑りぬけ、弓親は虚空に飛び出た。

「…テメェ、助けろなんて俺は一言も言ってねェぞ!」

 後方支援を担当していた筈の弓親に、背を向けたまま一角は叫んだ。
叫びつつ、振り下ろされる別の虚の一撃をかわし、上から一刀両断に叩き斬る。

「貸しひとつだよ。別に、助けに入ったわけじゃないから!」
「ンじゃ何だってんだ、人の楽しみ取りやがって!」

 二人について虚討伐に出ていた部下達は、其のやり取りに唖然とした。
向き合う事無く、背を向けた同士のまま、虚を其の――始解もせぬ刃で次々と切り伏せ、
一匹斬ればまた次へ、休む事無く走ってゆく。
 化け物だ――誰かがそう呟いた。
己達が隊長だけでなく、この、強大な力を持つ席官達も、また。
――其の声に構うことなく、弓親は、一角へ声を投げた――口元に、淑やかな笑みを浮かべ。

「……僕だって、戦いたくなっただけ!」

 タンッ――
重力などないかのように、弓親が虚の一匹を足場に、空高く舞い上がる。
みるみる高度を上げる燕のような姿に、虚達は我先にと其の身を伸ばし、口を開いた。


 「 咲け――藤孔雀! 」

 其の始解を奏でる声は、果たして耳に届いただろうか。
四刃の鉤鎌へと姿を変えた斬魄刀は、横薙ぎの一度の余波だけで
取り囲んだ虚達を切り裂き、唯の朽片へと変えていく。
 刃の残像が右へ左へと翡翠色に揺れる度、風に裂かれたかのように、
虚達は其の身体の一部をぼとぼとと落とし、塵に還っていった。


 空に鳥が舞い上がれば、地上では獣が牙を剥いていた。


 「 裂けろ、鬼灯丸! 」

 距離を取ろうと身を引いた虚の腹に、三節棍の刃が深々と突き刺さる。
声にならぬ醜い叫び声を上げてのた打ち回る虚の頭を、逆節が叩き割った。
浴びる返り血に構わず、一角は振り向きざまに背中を狙った虚の首を棍の節で薙ぎ、
首の骨を砕いた上で逆袈裟に刃を走らせ、心の臓を裂き破る。


 地上で蠢いていた虚の残党が獣の牙に怯え逃げようとした其のとき、
遥か上空で、ぱち、と微かに霊子同士が弾けあう音がした。
…其れは、霊圧の察知や鬼道に長けた死神でも、気付かないような微かな蠢きだった。

「――三千世界の風見鶏――」

 幾重もの虚を足場にかなりの高度まで飛び上がった弓親は、謡うような声で詠唱を始めた。

「――十六夜の月、羽瞬かす十姉妹――刹那にして千里翔け、五十の鈴漸う鳴らせ!」

 ぱ、ちん――
大気中の霊子が、渦を巻きながら収縮を始める。
詠唱を間近で耳にした虚が、慌てて元来た空を戻り始める姿に、弓親はくつ、と喉の奥から笑った。

「……遅いよ」

 轟、と、弓親の横に空気が収縮し、三つの紋と化した。


 其の時、地上に居た者は皆、雷鳴のような空に何かの走る音を、感じた。
何事かと空を仰ぐ間もなく、一角が棍を収め、声を張り上げた。

「テメェら、死にたくなけりゃ、後ろ振り向かずに今すぐ走れ!」

 一角の声にわっと散らばり始めた隊員を他所に、風の塊はぐんぐん速度を増し、
空が落ちるかの如く衝撃を撒き散らしながら地面へと、虚を幾匹も叩きつけた。
かろうじて直撃を逃れた虚が、其れでも身体を削り取られ、力なく其の身を上げた刹那。

「悪ィな、終いだ」

 ザン――
弧を描く鬼灯丸が、次々に虚の首を横に斬り飛ばしていく。
じゃらり、と鎖の音をさせ、三節棍を戻した一角の後ろに、ふわり、と、影が降りた。

「…弓親、テメェやり過ぎだ、馬鹿」
「そう?此れでも比較的加減した方なんだけど」

 小首を傾げ、可愛らしく一角の顔を覗き込む弓親。
と、其の脳天に、硬い音を立てて一角の拳が一撃を浴びせた。

「つ、ッ……!い、っかく、痛…」
「馬鹿だ馬鹿、テメェは本っ当にな!どうすんだ、俺まで巻き込む気かアァ?!」
「だからって普通握った拳で殴る?馬鹿はどっちだよ一角の馬鹿ッ」

 頭を抑えつつ抗議の声を上げる弓親に、引かぬ態度で喧嘩をふっかける一角。
遠くから成り行きを見守っていた部下達は、さて如何したものかと互いに顔を見合わせた。
ぎゃあぎゃあと煩く言い争いを止めない上司二人に、取り合えず先に帰るか、と
投げやりな結論を出したのは、二人が喧嘩を始めて十分が経とうかとしている時だった。

「弓親テメェなぁ、あンな戦い方してたら、間違って斬り殺しちまうぞ?」
「――いいよ」

 脅し文句気味に呟いた一角の冗談に、弓親は静かに言葉を返した。
あまりに其の一言が真摯で、静かで、落ち着いた声色で。
思わず一角は弾かれたように顔を覗き込み、じっと見詰めた。

「――最後に君の眸を見詰めて逝けるのなら――僕はどんな罪でも構いはしない」

 しん、と。死臭の漂う剥き出しの大地に、静寂が走った。


「…なんて、本気にした?」
「……からかうなんざイイ度胸だな、オイ」

 くすっと笑みを零しながら顔を逆に覗き込んだ弓親を抱き寄せ、息が出来ぬほどの口付けで
一角は言葉の外で返事をした。血錆の、キツイ味が唇越しに舌を痺れさせる。


 何時かは起こりえる未来なら

 其の時、君の眸に最後に写るのは僕であればいいと思う

 そして、僕の眸に最後に君が写るのならば


 僕は君に―――


 ―――殺して欲しい

<了>

隣り合わせ=君の横、この居場所、死ぬかもしれない危険、来ないかも知れない明日
隣り合わせの死=君の隣に居る限り得る可能性の、ひとつ
そのなかでもしひとつ、しあわせをみいだせると、したら

…バトルシーンを久々に書きたかったのですが。
BGMはALI PROJECTの【阿修羅姫】。
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