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三条琉瑠@秘姫堂のHP兼ブログ。BLEACHで弓受で徒然なるままに。 新旧十一番隊最愛。角弓・剣弓・鉄弓などパッションの赴くままに製作中。パラレルなども取り扱い中。 ※お願い※yahooなどのオンラインブックマークはご遠慮くださいませ。
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プロフィール
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三条琉瑠
性別:
非公開
自己紹介:
明太子の国在住の社会人。
小咄・小説を書きながら細々と地元イベントにサークル出していたり何だり。
弓受なら大概美味しく頂けます。



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※開設二ヶ月記念企画リクエストにて
 セイさまよりリクエストいただきました
 「角弓前提、一角と恋次の身体が入れ替わってしまうネタ」予告編です。
本編は完成次第アップしますので少々お待ちくださいませ(平伏)



 雷ってのは、遠雷だから綺麗とか凄いとか、
ドコに落ちたんだーなんて呑気なこと言えるんだろうな。
間近とか、あまつさえ自分に落ちた日には…うん、とてもじゃないけど。
――晴天の霹靂ってこういうのを言うんだろうな。


 弾き飛ばされて屋根に上ってしまった蛇尾丸の鞘を
よいせと登って取りに行ったまではよかった。

「恋次、早く降りて来いっつの、続きするぞー」
「解ってますよ、今降りますから…ぅおっ!」

 飛び降りようと踏み切った瞬間。
足元の瓦が外れて滑り落ちた。
そしてそのまま俺は頭から地面に落ちて。

 地面とは違うが凄まじい衝撃があって。
今俺の目の前では、俺が頭を抱えてる。


 【 Changing For The …Bad? 】


 <本編は少々お待ちください>
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※新旧十一番隊の頃の話。七夕小噺。
 ほのぼのです。


 隊舎の中庭にどんと刺さっているソレ。
ヘタすれば屋根に届くくらいの背はあるだろうか。
一角は思う。昨日まではあんなのはなかったハズだ。

「…なァ弓親、ありゃ何だ?」
「笹だよ。副隊長が欲しいって言ってたから、隊長がどこからか貰ってきたんだって」

 そびえ立つソレを見上げながらの一角の言葉に、弓親はさらっと答えた。
笹のすぐ傍の縁側には、殺風景な隊舎を彩るかのように、色とりどりの千代紙。
短冊や、果物や野菜を象った飾り細工。

「つるりんも手伝って!今から皆で笹飾り作るんだから!」

 元気なやちるの声に振り返れば、恋次が情けなさそうな顔をしつつ、
せっせと紙を折っては切り、輪にして繋げる、という作業をこなしていた。


 < 桶に水張り七夕空を見てみよか >


「…つか、絶対他の隊の奴らには見られたくねェ姿だなコレ…」
「あー、間違いなく噂にされますよね…」
「バカか恋次、笑い話にされるに決まってンだろ」

 手先が器用だからと笹飾り作りのリーダーを任された一角が、眉間に皺を寄せて呟いた。
そう忌々しげに言う間にも、手の中の千代紙はさっと吹流しに姿を変え、
笹飾りをひとつ、またひとつと作り上げていく。
その手際のよさを感心して眺めながら、恋次は苦笑いを浮かべた。
くると自分の後ろを振り返り、いかにもいかつい隊員たちが、文句のひとつも言わずに
いそいそと笹飾りを作る姿が目に入れば、確かに思う。
 コレを見られたら末代までの笑い話にされそうだ、確かに。

「みんなー頑張ってー!今お料理作ってもらってるからねー」
「「「はーい」」」

 やちるの明るい声に、野太い返事が返される。
他の隊からは疑問を唱える声もあるが、やちるは名実ともに間違いなく十一番隊の副官である。
三席以下が誰も逆らえない今の状況が何よりの証拠だ。
色とりどりの輪を連ねていきながら、恋次は改めてそう思っていた。

「…そういやよ、恋次」

 不意に一角から声をかけられ、はい?と恋次は顔を上げた。
吹流しにより糸を通しながら、一角は真顔で聞いた。

「何で七夕ッつーのは願い事を短冊に書くんだ?」
「え?!いや…七夕だからじゃないですか…?」
「それがどうしてだッつーの」
「……スンマセン、ソコまでは流石に…」

 つなぐ前の輪を手に固まってしまった恋次を横目に、
作業していた隊員たちに一角は視線を寄越す。
当然、無骨な戦闘集団を名乗る中でソレを知る者が居る筈もなく、
当てずっぽうな考えや今考えましたと言わんばかりの意見が、交差し始めた。

「天の川渡るくらいの奇跡が起こるからじゃないんすか?」
「俺昔かーちゃんに、お星様が聞いてくれるからって聞いたぜ?」
「お前お星様って…」
「ナスの飾りとかお供えするついでじゃなかったか?」
「三席は知らないんですか?」
「バーカ、知らねェから聞いてんだ」

「昔はお裁縫や機織が上手くなりますよーにってお祈りしたからなんだって」

 皆が作った飾りを笹に飾り付けていたやちるが、不意に答えを出した。
んしょ、と脚立の上でより糸を結びながら、言葉を続ける。

「二つの星は農耕の星と織物の星だから、ナスの飾りをお供えしてたくさん取れますよーに、とか
 短冊は布で飾って、もっとお裁縫上手くなりますよーに祈ったんだって…剣ちゃんが言ってた」
「は!?隊長が?」

 やちるの口から出た答えの出所の意外さに、思わず恋次の手が止まった。
一角が怪訝そうにそちらを睨むと、やちるの横で飾り付けを手伝っていた
弓親が向き直り、少しだけ苦笑を浮かべた。

「そんな顔しなくても、今の説明はどこも間違ってないよ。全部、正解」
「ねーナルちゃん!ほーら、剣ちゃんは間違い教えたりしないんだから!」
「いやまぁそうかも知れませんけど…」

 硬直から戻った恋次が恐る恐ると言ったように進言すると同時に。
やちるはぴょいと脚立から降り、残りの飾りを縁側まで戻しにきた。

「じゃ、あたしお着替えするから後飾りつけしててね!」
「オイこらドチビ!最後までやってけっつの!」
「さぼったらご飯抜きなんだからねー」

 一角の言葉など耳に入らないかのように、飾りの入ったざるを置いて
たたっと縁側を走り始めてしまったやちるに、弓親がくすくすと笑みを零した。

「副隊長、楽しみにしていたからね…」
「…まァな。んでよ弓親」
「何?」
「今日の食事ってのは、酒出ンのか?」
「勿論。料理だって、今鉄さんが魚捌いてるところだし」
「ンじゃ、ちょっくら頑張るかねっと…オーイ、テメェら作るのもういいぞ、飾りつけ手伝えー」

 日暮れも近くなった庭に出る一角を眺めながら、弓親は夕空を眺めた。
見上げる空は透き通った山吹色。この分なら、星は見えるだろう、と。


 やがて飾りつけも終わり日が落ちると、死覇装から私服に着替えた隊員たちが
笹が良く見える部屋に集まり、障子を開け放して宴会となった。
冷たく盛られた刺身や冷えた野菜など、火照った身体を心地良く冷やす食事と
氷水の桶に瓶ごと入れられたよく冷えた酒。
 笹を飾り付けるまでの労を各々に労っていたとき、射場が一角を手招きした。

「何すか射場さん」
「のぉ一角、ちぃと聞きたいんじゃが…笹の短冊、全部何も書いとらんのは何でじゃ?」
「短冊…?」

 手招かれるままに縁側に出て笹を凝視する。
五色の短冊がかかっているけれど、確かに良く見ればそれは全て何も書かれていない。

「いや、俺が飾りつけた時には短冊なかったンすけど…オイ恋次ー」
「あ、はーい直ぐ行きます」

 首を傾げたままの一角が今度は恋次を手招き同じコトを聞くと、
あぁ、と恋次は小さく頷き、頭をかきながら答えた。

「飾ったのは俺ですけど…隊長から”後はコレ飾っとけ”って渡されて…」
「隊長から?」
「あぁ…そんならエェわ。スマンの」

 聞き返した一角とは対照的に、何かを納得したかのように頷く射場に、
恋次と一角は二人して首を傾げた。
と、そこにぴゅんっと何かが飛んできたかと思うと、射場の背中にぺたっと張り付いた。

「いばっちー、お酒どこー?」
「ん?どがんしたんですお嬢、何ぞ、おつかいですか?」
「うん、剣ちゃんのお酒なくなっちゃったから貰いに来たのー!」
「ほんなら一緒に中行きましょうかの。一角、恋次、ワシはこれでの」

 空っぽの硝子瓶を振ってそう答えたやちるをおぶったまま、
射場は部屋の中へと戻っていった。
縁側に取り残されてさてどうするか、と顔を見合わせた二人のところに、
先ほどやちるが来たほうとは逆から弓親が歩いてきた。
手に抱えた小さめの桶に張られた水が、ちゃぷん、と微かに揺れる。

「…どうしたのさ、二人とも」
「いや…あのよ弓親、短冊に何も書いてねェワケ、知ってるか?」
「え?どうして?」
「射場さんは知ってるみたいなんですけど、俺も一角さんも教えてもらえなくて…」

 ぽり、と頭を書く恋次の言葉に合点がいったのか、弓親は静かに笑った。
縁側に水桶を置いて腰掛けると、つられるように二人も腰掛けた。
軒先で大きく背を伸ばす笹を見上げながら、弓親は笑いながら、言葉を紡ぐ。

「最初は僕と副隊長とでお願い書いてたんだけど、そしたら隊長がね…
 ”星に願うような事が叶うはずねぇ、叶えたきゃ自分の手で掴み取れ”って」

 あの人らしいよね、と呟いた言葉に、一角はくつ、と喉から笑みを零した。
恋次もはは、と少し笑いを浮かべると、あの人らしいっすね、と頷いて。

「あー、ナルちゃーん…その桶なぁに?」
「副隊長、お待ちしてました…お見せしたいものがあって」

 部屋の中からお酒を満たしたお銚子片手に縁側に戻ってきたやちるに、
弓親は桶を縁側のふちに置くと、こちらへ、と手招いた。
これ持ってて、とお銚子を恋次に預け、白に赤の金魚が泳ぐ柄の浴衣で、
薄桃色の金魚帯を揺らしながら、やちるはててっと桶に近づいた。

「…?何も入ってないよ?」
「水面を、よく見てください」

 じぃっ。
やちるだけでなく、一角や恋次も、水を張った桶に見入る。
何も入っていない、黒の中に白が点々とあるだけの水面に
大人二人は首を傾げたが、やちるはあることに気付いて目を輝かせた。

「ナルちゃん、お星様が写ってる」
「えぇ、そうです。そしていいですか…?」

 ふぅー、と。
吐息が水面をなぞると微かな波が起こり、水面に映し出された星空が
ゆらゆらと不規則にゆれ、その姿をぼやかした。
見入りながらも不思議そうにするやちるに、弓親の言葉は魔法の一言のようだった。

「今、水面が揺れることによって、二つの星がお互いに近づいたんですよ」

「…じゃあ今、おりひめとひこぼしが会えたの!?」
「はい、そう言うことです」
「凄いすごーい!ナルちゃん、もっかいふーして!」
「同じ人が何度も揺らしてはいけないんですよ。本当は風でなければいけないんですが…」
「じゃあれんちゃん団扇持ってきて!風おこして!」
「えぇえ!?俺っすか!?」

 文句は言いつつも、逆らえないのが十一番隊の副隊長。
お銚子を近くにあった盆の上に置くと、慌しく部屋の中に入って
涼を取るための団扇を借りて縁側に戻り、ご希望通りにぱたぱたと風を起こし始めた。


 中庭で、笹の葉がさらさらと風に揺れる。
満点の星空の下、喧騒を少し遠くに聞きながら。
かさ、と白いその手がひとつ、短冊を飾る。

「…隊長に怒られても知らねェぞ、弓親」

 後ろから不意にかかった声に、小さく笑んで。

「さぁ、僕が書いたって証拠はないし」
「ンじゃ俺が黙ってりゃイイ訳か」
「そういうこと…ね?」

 一歩一歩と真後ろまで寄ってきた一角は、飾られたばかりの短冊を手に取った。
流暢な文字で書かれた言葉を読むと、くつと喉で笑う。
最高、と笑いながら親指を立てた一角に、弓親は微笑で返して。

「…そういやよ」
「何?」
「さっきの桶のヤツ…」

 指差した縁側では、恋次がまだ甲斐甲斐しく団扇を仰いでいた。
もっともっとー、と強請るやちるをそろそろ止めようかと部屋から出てきた射場が見える。
指差した先を見ながら、あぁ、と弓親は言いにくそうな表情を浮かべた。

「…副隊長が、”本当に七夕には二つのお星様会うの?”って何度も言うから、
 何とかしろって隊長に言われて…」
「…成る程な」

 笹と笹飾りが、風にさらさらと音を立てる。
夏の気配を感じる温い夜風を感じながら、一角と弓親は顔を合わせ、また笑った。


 『いつまでも、更木隊の絆がありますように』


<星にも願いを>
※一度下げていた【はにかみ3】の加筆修正再アップです。
 こちらは前編。近いうちに後編もアップします。
 そこはかとなく現世パラレルな感じでお読みいただけましたら。



 誰と、誰が、いつどこで、何をする。

 一角と、風邪を引いた弓親が、弓親の自宅で、看病。


 < いつどこはにかみ 角弓3~前 >


「ゴメン一角、風邪引いたみたいだから…今日、休むね?」
『は?テメェ風邪引くなら引くって前もって言っとけよ!』

 今に始まったことではないけれど、勝手だ。
熱に浮かされて朦朧とする意識の中、携帯から返された声に弓親は少し怒りと、呆れを覚えた。

「……そういう問題じゃないし…だから今日、休むって伝えといて…」
『待てコラ、弓親!』
「…なに…?」

 慌てた声に、既に掠れた声で微かに問い返す。
続いて聞こえた一言は、力の抜けたこの身体を更に脱力させるに十分だった。

『テメェ、俺と風邪とどっちが大事だ!』
「………一角、理不尽だよ…じゃ、本当に辛いから切るね…オヤスミ」

 ピッ。
ディスプレイに浮かび上がる通話終了の文字。
空ろな頭でボタンを操作し、サイレントモードに切り替える。
サイドボードにカラフルな携帯を投げ置くと、布団を被りなおし、眠る体勢になった。

 今に始まった理不尽じゃないけど、やっぱ一角って馬鹿だ。
どうして好きなんだろう、あんな奴なのに。

 もぞ、とベッドの上で身体を身じろがせ、熱に浮かされたまま、眠りに入ろうとする。


 でもやっぱり……好きだ。


 どうしても理由のつけられない感情にそう結論付けたと同時に、意識は落ちていった。


 一体どれぐらい眠っていたのだろう。
真っ白な天井と自分の荒い吐息が混ざり合って、ぐらぐら回る感じがした。
何度目覚めて眠ってと浅い周期を繰り返しただろうか。
 ふと、弓親は物音に目を覚ました。

「よ。目ェ覚めたか?」

 ベッドの上から覗き込む一角の姿に、胸の中がじわりと温かくなる。
息苦しさに不安げに見上げると、静かに其の手が髪を撫でた。
不意打ちで、卑怯だ。風邪で弱ってる自分にそんな風に優しくするなんて。
――其処まで思ってあることに考え付き、聞かなければ優しいままに思えそうなのに、
それでも言葉は、思った不安をそのまま口にしていた。

「……ちょっと待って一角…合鍵、いつ渡したっけ…?」

 身体を起こすことも辛いため横になったまま不安げに聞けば、明朗な答えが帰ってきた。

「何言ってやがんだ。俺にとっちゃ合鍵を作るなんて朝飯前だぜ?」
「それ勝手に作ったんでしょ…何やってるの、殆ど泥棒だよ?最ッ低…」
「お前なぁ、人が親切で来てやッたんだから、もーちょっと礼の言い方ッつーモンねェか?」
「…言っとくけど圧し掛からないでよ。強制力と言う名の蹴りかましてやるんだからね…」

 覇気のない声で文句を返す弓親の額を撫でると、
寝とけ、と一言告げ、一角はベッドから立ち上がろうとする。
 ぐ、と、軽い感触。
何かと思って振り返れば、弓親の手は弱弱しくズボンを握っていた。
其の表情があまりにもたおやかで、儚くて、切なげで。

「…帰ったり消えたりしねェからよ。ちょっとだけ、待ってろ…な?」

 ぽん、と頭をもう一度撫で、に、と笑いかけてやる。
渋々と言った感じで頷き、手を離した弓親をベッドに寝かせたまま、一角は台所へ向かった。

(何か…悔しい…)

 熱に浮かされてだるいままの頭でぼんやりとそう思いながら、
弓親は少しだけ唇を尖らせた。
怒っているわけではない、のだけれど。ただ、その優しさが悔しいのだ。
それでも、一角が居ることに安心する自分が居る。
一角が来てくれたことに、嬉しくて、縋ってしまいそうな自分が居る。

(……勝手だなぁ…)

 枕に突っ伏した顔で、少しだけ溜息をついて。
汗ばんだ体の重さに眉を顰めつつ、気づけば意識は柔らかくまどろみ始めていた。


 再び目が覚めたとき、部屋には柔らかな香りが漂っていた。
それがお粥だと気づくと瞬きを数度し、帰ったのかと一角の姿を探す。
 と。

「ンな顔しねェでも帰らねェつったろうがよ」


<後へ続く。一旦CM入ります>
※修兵さん一人称小咄。
 修要で角弓。今週のWJネタ含む。
 こういうのは時事ネタだから今書いとかないと!
 と思う反面、普段時事ネタ使わない人間なのでドキドキ。
 うちの修兵さんと弓は恋愛感情ではなく共同感情のような関係なのです。




 この心の傷はまるで紙の折り目のようだ

 付けるのは容易く戻すのに時間がかかり

 その上完全に戻ることはない

 貴方を慕っていた心の広さ全てを

 真っ二つに折ってしまったかのようで


 【Shunikiss】


「あークソッ、あの桃頭副隊長ドコいってんだ本当に…!」
「スンマセン檜佐木副隊長。多分ー…今日はもう戻ってこないかと」

 恐る恐る声をかけてきた十一番隊の席官の言葉に、
俺はがりがりっと頭をかいた。
探してきてくれと言おうかと思ったが、書類仕事の要の
三席五席を現世に出張にやってるココは忙殺と呼ぶに相応しく、
席官たちは皆残された仕事をこなすのに一杯いっぱいだ。
 せめて綾瀬川だけでも残ってりゃあ渡すのにな…。
腰のポーチに入れた回覧用通信をポーチの上から撫でて、
それもしょうがないか、と溜め息をひとつ、俺はついた。

「…荒巻て言ったか。通信は先に回すって伝えておいてくれ」
「あ、はい、確かに。副隊長にお会いしたら伝えときます」

 頭を下げる席官にひらっと手を振り、俺は十一番隊の
隊舎を後にした。響いてくる喧騒がいっそ、物悲しい。
何でかってこの喧騒、こなせない仕事に上げてる悲鳴なんだから。

「……十二番隊はどーせ行っても無駄だよなぁ…」

 だだっ広い廷内を、歩法を使うこともなくただ歩いていく。
行って門前払いされた十二番隊には壷府に伝言を頼んで。
最後に控える浮竹隊長の元へ、ただ歩いていく。


 やがて空の開けた荒野に差し掛かったとき、溜め息が毀れた。
何だ、俺の心の折り目はちっとも戻っちゃいないじゃないか、と。
いつから俺はこんなに弱くなっちまったんだ、と、苦笑が浮かんだ。

 ココにアイツが居れば、「軟弱者」の一言でも投げつけて、
馬鹿にするように叱咤してくれるんだろうか。

 今は現世で対破面作戦に向かっている綾瀬川を、思い出して。
不思議な関係だと、思う。友と呼ぶには嫌悪が強い。
敵と呼ぶには互いを知っている。恋なんて感情はお互い願い下げだ。

 鏡のようなものなのか。
痛みも辛さも言い合えて、理解することが出来る。
だけど永遠に相容れない、平行線のような存在。


 あの人に置いていかれた俺を叱ったのは、アイツだけだった。
全ての人が腫れ物に触れるように俺に接する中、
綾瀬川だけは面と向かって、「何落ち込んでるのさ、馬鹿?」と、
ご丁寧に俺の部屋まで来て、言い放った。


 「ッ、テメェに何が解る……!!」

 掴みかかった俺の手をぐっと抑えて、言った。

 「解らないよ何も!だけど!其処まで後悔するなら、
  どうしてもっと掴んでいなかったのさ!
  置いていくなって言わなかったのさ!
  東仙隊長に着いて行かなかったのさ!」

 俺は思わず驚いて…思ったままを、口にしていた。

 「……じゃあ、もしテメェは、更木隊長が
  あぁやってどっか行っちまうならどうすんだ?あ!?」

 よどみない声の答えは、俺の心を劈いた。

 「着いていくに決まってるよ。あの人が来るなと言わない限り。
  来るなと言うなら何時まででも待ってみせる。
  ”僕ら”の隊長は、あの人しか居ないのだから」

 目を見開いて言葉をなくした俺の目の前で、ぽつりと一言。

 「―――…其れが一角だったら、解らないけどね」


 引き止められなかったのも着いていけなかったのも、
全ては俺が何もしなかった結果だ。
そう思った瞬間、俺の心の折り目を糊していた何かは消えて、
ようやっと心は、元に戻ろうと開き始めた。

 現世に行く綾瀬川は、もしかしたら”敵となったあの人”に
会う機会があるかもしれない、と前置きした上で、
「何かあれば、伝えてくるけど?」と、俺に聞いた。

「ヘンな気回すんじゃねぇよ。言いたいことは、俺の口から伝える」

 いつか。
そういつか、あの人に再び会えることがあるのなら。
笑った俺の顔を見て、綾瀬川も少し、笑っていた。


 荒野の空を見上げ、目を細めた。
先の戦いでは限定解除を用いて辛くも勝利、だと聞いた。
それすら連中の本隊ではないと言う。
此れからの戦いは更に厳しくなると、通達があった。

「……なぁ、綾瀬川」

 空を見上げ、呟いた。
お前が我を張ってまで隣に居たいと願ったことは、俺も聞いた。
握る拳に人知れず力が篭る。

「…お前は、掴んだその手を……離すんじゃねぇぞ」

 だから、どうやってでも掴んでいろ。
お前がアイツを失うことは、俺があの人を失うことの比じゃないだろう。
そしてアイツも同じくらい、お前を失うことは傷になる。

「二人とも、生きて帰って来い」

 そしたら愚痴でも惚気でも苦労話でも聞いてやるよ。
空に飛ばしたその呟きは、誰の耳にも入ることなく消えていった。

<終>
※開設二ヶ月記念企画リクエストにて
 ムツキさまよりリクエストいただきました「角弓あまあま」です。
 ご本人様に限りお持ち帰りOKです。




 【 パステル・キャンディーは悪魔の囁き 】


 ころん。
形を崩さないように慎重に、硝子瓶からプラスティックのケースに
ひとつずつソレを移していく。

「…ナニやってンだお前。つかソレ何だ?」
「ん。副隊長へのお土産」

 いつの間にか部屋に入ってきてた一角には声だけ返して。
 ころん。
鞠飴より真ん丸の一色飴が、透明な筒の中を抜けて
まだ空っぽに近い別の筒に入っていく。

「あー…そういやお前昨日現世行って来たンだったな。で、オイ」
「何?」
「俺への土産は?」

 ころん。
美味しそうな桃色の飴が、摘み上げた指先からケースの中に
転がり落ちていく。現世で見つけた色鮮やかな瓶入りの飴玉。
 後ろから覗き込むほど近寄っては物欲しげに見つめる一角に
さてどうしてやろうかと思いつつ、僕はふと思い当たった。

「…じゃあ、現世で見た面白い遊び教えてあげる」
「は?ンだよソレ」
「いいから…ピザ、って十回言ってみてよ」

 ころん。
落としても大丈夫なように、硝子瓶から丈夫なプラスティックに
パステルカラーというべき淡い色を纏った飴玉を移していく。
その後ろで面白くなさそうにしつつもぶつぶつと
二文字の言葉を唱える一角に、少しこみ上げる笑いを抑えて。

「ぴざ…十回言ったぜ?」
「じゃ、ココは?」

 間髪入れず、振り返って。
腕の真ん中に位置する大きな節を指差して、
にっこりと、聞いてみた。

「膝」

 即答。いっそ見事だよ一角。
堪えきれずに笑い出した僕に、一角は気づいた様子で。
みるみるうちに顔は怒りで赤くなって、眉が釣りあがって。
口の端がひくっと上がるのを見れば、僕はもう大笑いしてしまった。

「ッ…あははっ、一角、凄いよある意味…!」
「だーッ面白くねぇ!コレの何が遊びだっての!」
「だから、そうやってひっかける言葉遊びなんだよ…っはは…」

 目じりに浮かんだ涙を拭って一角を見れば、
納得いかなさそうに僕を睨んでいて。
だけど、ふ、と何か思いついた様子になって、
一角はとても面白そうに、ニヤ、と笑った。

「…いいぜ?そンじゃあコレから俺が出す遊びにも付き合えや」
「いいけど…何?」
「今のテメェのと同じだけどよ」
「あぁ、十回遊戯ね」

 生憎、言葉遊びで負ける気はない。
くすっと笑みを浮かべて見せれば、一角は益々
ニンマリと人相の悪い笑みを浮かべた。
 時間に置き忘れられた飴玉が、ころんと微かに転がる。

「『愛してる』って十回言えや」
「…?」

 そんな十回遊戯あったっけ?
僕は少し慎重深くなりながら、言霊のようにゆっくり唱え始める。
一回ごとに頷く一角を見つめながら、何度も唱えて。

「愛してる…愛してる……はい、十回言ったよ?」


「おう、お疲れさん。俺も愛してるぜ弓親?」


 きょとん、と。
僕の瞳が大きく見開いて、は?と言いたげに一角を見上げる。
やがて僕の頭はひとつの答えをはじき出して。
 ……はめられた?
そう思うと同時に、ぼっと耳まで熱くなるのが解った。

「ッ、ちょ、一角っ!!」
「いやーコレいい遊びだなぁ、っと。んじゃ俺稽古あるから」
「二度と帰ってくるな馬鹿ぁッ!!」

 たったかと逃げ出す一角の頭目掛けて、
飴玉をひとつ、全力で投げつける。
其れは当たることなく、ぱしっと手で受け止められて
すぐに、一角の口の中に消えた。

 甘ェ、と言いながら部屋から去ってしまった一角に
心の中で悪態をつきながら、僕は飴玉を再び移し始めた。

 ころん。

 …ダメだ。さっきの言葉が消えない。
あぁもう本当、何て悪魔の囁きを残して行くんだか。

 ころん。

 甘くて美味しくて、心の中に入り込んでは消えてくれない。
一角の『愛してる』が、溶け込んで消えてくれない。

 ころん。

 ……そしてその言葉を。
誰より喜んでいる僕も、パステルカラーの飴玉のように、甘い。


<キャンディーを誰よりも喜んだのは、だぁれ?>

二ヶ月記念リクエスト、ムツキさまより「角弓あまあま」でした!
一角はちょっとSなくらいが、そして弓はツンツン時々デレなくらいが
ちょうどいいと仰ってあったので、こんな感じの二人に仕立ててみましたが…!
本当、思った以上に甘くなってしまいました(笑)
リクエスト本当にありがとう御座いましたー!
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