※開設二ヶ月記念企画リクエストにて
ムツキさまよりリクエストいただきました「角弓あまあま」です。
ご本人様に限りお持ち帰りOKです。 【 パステル・キャンディーは悪魔の囁き 】
ころん。
形を崩さないように慎重に、硝子瓶からプラスティックのケースに
ひとつずつソレを移していく。
「…ナニやってンだお前。つかソレ何だ?」
「ん。副隊長へのお土産」
いつの間にか部屋に入ってきてた一角には声だけ返して。
ころん。
鞠飴より真ん丸の一色飴が、透明な筒の中を抜けて
まだ空っぽに近い別の筒に入っていく。
「あー…そういやお前昨日現世行って来たンだったな。で、オイ」
「何?」
「俺への土産は?」
ころん。
美味しそうな桃色の飴が、摘み上げた指先からケースの中に
転がり落ちていく。現世で見つけた色鮮やかな瓶入りの飴玉。
後ろから覗き込むほど近寄っては物欲しげに見つめる一角に
さてどうしてやろうかと思いつつ、僕はふと思い当たった。
「…じゃあ、現世で見た面白い遊び教えてあげる」
「は?ンだよソレ」
「いいから…ピザ、って十回言ってみてよ」
ころん。
落としても大丈夫なように、硝子瓶から丈夫なプラスティックに
パステルカラーというべき淡い色を纏った飴玉を移していく。
その後ろで面白くなさそうにしつつもぶつぶつと
二文字の言葉を唱える一角に、少しこみ上げる笑いを抑えて。
「ぴざ…十回言ったぜ?」
「じゃ、ココは?」
間髪入れず、振り返って。
腕の真ん中に位置する大きな節を指差して、
にっこりと、聞いてみた。
「膝」
即答。いっそ見事だよ一角。
堪えきれずに笑い出した僕に、一角は気づいた様子で。
みるみるうちに顔は怒りで赤くなって、眉が釣りあがって。
口の端がひくっと上がるのを見れば、僕はもう大笑いしてしまった。
「ッ…あははっ、一角、凄いよある意味…!」
「だーッ面白くねぇ!コレの何が遊びだっての!」
「だから、そうやってひっかける言葉遊びなんだよ…っはは…」
目じりに浮かんだ涙を拭って一角を見れば、
納得いかなさそうに僕を睨んでいて。
だけど、ふ、と何か思いついた様子になって、
一角はとても面白そうに、ニヤ、と笑った。
「…いいぜ?そンじゃあコレから俺が出す遊びにも付き合えや」
「いいけど…何?」
「今のテメェのと同じだけどよ」
「あぁ、十回遊戯ね」
生憎、言葉遊びで負ける気はない。
くすっと笑みを浮かべて見せれば、一角は益々
ニンマリと人相の悪い笑みを浮かべた。
時間に置き忘れられた飴玉が、ころんと微かに転がる。
「『愛してる』って十回言えや」
「…?」
そんな十回遊戯あったっけ?
僕は少し慎重深くなりながら、言霊のようにゆっくり唱え始める。
一回ごとに頷く一角を見つめながら、何度も唱えて。
「愛してる…愛してる……はい、十回言ったよ?」
「おう、お疲れさん。俺も愛してるぜ弓親?」
きょとん、と。
僕の瞳が大きく見開いて、は?と言いたげに一角を見上げる。
やがて僕の頭はひとつの答えをはじき出して。
……はめられた?
そう思うと同時に、ぼっと耳まで熱くなるのが解った。
「ッ、ちょ、一角っ!!」
「いやーコレいい遊びだなぁ、っと。んじゃ俺稽古あるから」
「二度と帰ってくるな馬鹿ぁッ!!」
たったかと逃げ出す一角の頭目掛けて、
飴玉をひとつ、全力で投げつける。
其れは当たることなく、ぱしっと手で受け止められて
すぐに、一角の口の中に消えた。
甘ェ、と言いながら部屋から去ってしまった一角に
心の中で悪態をつきながら、僕は飴玉を再び移し始めた。
ころん。
…ダメだ。さっきの言葉が消えない。
あぁもう本当、何て悪魔の囁きを残して行くんだか。
ころん。
甘くて美味しくて、心の中に入り込んでは消えてくれない。
一角の『愛してる』が、溶け込んで消えてくれない。
ころん。
……そしてその言葉を。
誰より喜んでいる僕も、パステルカラーの飴玉のように、甘い。
<キャンディーを誰よりも喜んだのは、だぁれ?>
二ヶ月記念リクエスト、ムツキさまより「角弓あまあま」でした!
一角はちょっとSなくらいが、そして弓はツンツン時々デレなくらいが
ちょうどいいと仰ってあったので、こんな感じの二人に仕立ててみましたが…!
本当、思った以上に甘くなってしまいました(笑)
リクエスト本当にありがとう御座いましたー!
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