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三条琉瑠@秘姫堂のHP兼ブログ。BLEACHで弓受で徒然なるままに。 新旧十一番隊最愛。角弓・剣弓・鉄弓などパッションの赴くままに製作中。パラレルなども取り扱い中。 ※お願い※yahooなどのオンラインブックマークはご遠慮くださいませ。
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プロフィール
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三条琉瑠
性別:
非公開
自己紹介:
明太子の国在住の社会人。
小咄・小説を書きながら細々と地元イベントにサークル出していたり何だり。
弓受なら大概美味しく頂けます。



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※修兵さん一人称小咄。
 修要で角弓。今週のWJネタ含む。
 こういうのは時事ネタだから今書いとかないと!
 と思う反面、普段時事ネタ使わない人間なのでドキドキ。
 うちの修兵さんと弓は恋愛感情ではなく共同感情のような関係なのです。




 この心の傷はまるで紙の折り目のようだ

 付けるのは容易く戻すのに時間がかかり

 その上完全に戻ることはない

 貴方を慕っていた心の広さ全てを

 真っ二つに折ってしまったかのようで


 【Shunikiss】


「あークソッ、あの桃頭副隊長ドコいってんだ本当に…!」
「スンマセン檜佐木副隊長。多分ー…今日はもう戻ってこないかと」

 恐る恐る声をかけてきた十一番隊の席官の言葉に、
俺はがりがりっと頭をかいた。
探してきてくれと言おうかと思ったが、書類仕事の要の
三席五席を現世に出張にやってるココは忙殺と呼ぶに相応しく、
席官たちは皆残された仕事をこなすのに一杯いっぱいだ。
 せめて綾瀬川だけでも残ってりゃあ渡すのにな…。
腰のポーチに入れた回覧用通信をポーチの上から撫でて、
それもしょうがないか、と溜め息をひとつ、俺はついた。

「…荒巻て言ったか。通信は先に回すって伝えておいてくれ」
「あ、はい、確かに。副隊長にお会いしたら伝えときます」

 頭を下げる席官にひらっと手を振り、俺は十一番隊の
隊舎を後にした。響いてくる喧騒がいっそ、物悲しい。
何でかってこの喧騒、こなせない仕事に上げてる悲鳴なんだから。

「……十二番隊はどーせ行っても無駄だよなぁ…」

 だだっ広い廷内を、歩法を使うこともなくただ歩いていく。
行って門前払いされた十二番隊には壷府に伝言を頼んで。
最後に控える浮竹隊長の元へ、ただ歩いていく。


 やがて空の開けた荒野に差し掛かったとき、溜め息が毀れた。
何だ、俺の心の折り目はちっとも戻っちゃいないじゃないか、と。
いつから俺はこんなに弱くなっちまったんだ、と、苦笑が浮かんだ。

 ココにアイツが居れば、「軟弱者」の一言でも投げつけて、
馬鹿にするように叱咤してくれるんだろうか。

 今は現世で対破面作戦に向かっている綾瀬川を、思い出して。
不思議な関係だと、思う。友と呼ぶには嫌悪が強い。
敵と呼ぶには互いを知っている。恋なんて感情はお互い願い下げだ。

 鏡のようなものなのか。
痛みも辛さも言い合えて、理解することが出来る。
だけど永遠に相容れない、平行線のような存在。


 あの人に置いていかれた俺を叱ったのは、アイツだけだった。
全ての人が腫れ物に触れるように俺に接する中、
綾瀬川だけは面と向かって、「何落ち込んでるのさ、馬鹿?」と、
ご丁寧に俺の部屋まで来て、言い放った。


 「ッ、テメェに何が解る……!!」

 掴みかかった俺の手をぐっと抑えて、言った。

 「解らないよ何も!だけど!其処まで後悔するなら、
  どうしてもっと掴んでいなかったのさ!
  置いていくなって言わなかったのさ!
  東仙隊長に着いて行かなかったのさ!」

 俺は思わず驚いて…思ったままを、口にしていた。

 「……じゃあ、もしテメェは、更木隊長が
  あぁやってどっか行っちまうならどうすんだ?あ!?」

 よどみない声の答えは、俺の心を劈いた。

 「着いていくに決まってるよ。あの人が来るなと言わない限り。
  来るなと言うなら何時まででも待ってみせる。
  ”僕ら”の隊長は、あの人しか居ないのだから」

 目を見開いて言葉をなくした俺の目の前で、ぽつりと一言。

 「―――…其れが一角だったら、解らないけどね」


 引き止められなかったのも着いていけなかったのも、
全ては俺が何もしなかった結果だ。
そう思った瞬間、俺の心の折り目を糊していた何かは消えて、
ようやっと心は、元に戻ろうと開き始めた。

 現世に行く綾瀬川は、もしかしたら”敵となったあの人”に
会う機会があるかもしれない、と前置きした上で、
「何かあれば、伝えてくるけど?」と、俺に聞いた。

「ヘンな気回すんじゃねぇよ。言いたいことは、俺の口から伝える」

 いつか。
そういつか、あの人に再び会えることがあるのなら。
笑った俺の顔を見て、綾瀬川も少し、笑っていた。


 荒野の空を見上げ、目を細めた。
先の戦いでは限定解除を用いて辛くも勝利、だと聞いた。
それすら連中の本隊ではないと言う。
此れからの戦いは更に厳しくなると、通達があった。

「……なぁ、綾瀬川」

 空を見上げ、呟いた。
お前が我を張ってまで隣に居たいと願ったことは、俺も聞いた。
握る拳に人知れず力が篭る。

「…お前は、掴んだその手を……離すんじゃねぇぞ」

 だから、どうやってでも掴んでいろ。
お前がアイツを失うことは、俺があの人を失うことの比じゃないだろう。
そしてアイツも同じくらい、お前を失うことは傷になる。

「二人とも、生きて帰って来い」

 そしたら愚痴でも惚気でも苦労話でも聞いてやるよ。
空に飛ばしたその呟きは、誰の耳にも入ることなく消えていった。

<終>
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