※女の子弓で剣弓。年齢制限はかけませんがいかがわしいです。
触れられれば零すのは吐息だけ
口から毀れるのは言葉にもならない声
霊圧を零さぬよう幾重にも張った結界の中で、
月明かりに照らされて影が二つ、溶け合うように蠢いていた。
交わる、なんて生易しい言葉じゃない
――そう、喰われる
引きつる絹を裂くような悲鳴すら愉しまれ、追い詰められ。
組み敷かれた白い身を捩る姿は、尚更相手の欲情を煽るだけで。
まるで
痛みを凌駕する快楽の渦が、胎内から脳天を駆け巡って熔かす。
幾度迸りを受けただろうか。考える事すら今は難しい。
僕は貴方に捧げられたイケニエ
ふつ、と首元と手首に、焼けるような熱を感じて。
生理的な涙が毀れるのに構わず突き動かされ。
永遠に外れることのない、手枷と首枷に戒められて
そして数え切れない絶頂と同時に、僕は意識を手放した。
貴方愛しと傍で啼く
<贄姫>
日に焼けぬ白い肌が、薄暗い部屋の中で瞬くようにぴく、と動いた。
ぼんやりと覚醒しきれぬ意識の中、汗を吸い込んで冷たい布団から身を起こす。
身体を漸う起こすと、喉が水分を欲しがって渇きに引き攣った。
枕元に常備している筈の水差しを探す手が空を切ったとき、低い声が背の方から響いた。
「コレか?」
言葉が終わらぬうちに、ぴと、と首筋に冷たい感触がした。
喉の奥から乾いた声で小さく悲鳴を上げて振り返ると、貴方は面白そうにくつくつと喉で笑って。
「…頂きます」
力の入らぬ手を伸ばし、硝子の水差しを受け取ると、そのまま口をつけた。
少し生温い水が、体内に流れ込み、身体の隅々まで行き渡る感覚を覚える。
水差しに残っていた水を全て飲み干すと、額にじわりとまた汗が滲んだ気がした。
「まぁ、ちったぁ持つようになったが…もうちょっと堪えろ」
「…善処してるつもりですが…無茶言わないで下さい、隊長」
あぐらをかいて煙管を嗜む相手を上目遣いに少し睨めば、其れすら面白いのか
ニィ、と口角が上がり、ねめつけるような視線を向けてきた。
水差しを元あった盆に戻し、布団の横で乱雑に脱がされたまま投げられた襦袢に手を伸ばした。
「何だ、着ちまうのか。勿体ねぇ」
「裸のままうろつくのは僕の趣味ではないので…」
「いつもサラシ巻きやがって、見ることすら出来ねぇんだ。ケチくせぇ事言うんじゃねぇ」
「無茶言わないで下さいってば!…明かり、つけますよ?」
肩に羽織り、軽く黒い紐を腰で結んで、まだ重い身体を引きずって立ち上がって。
…紅い布地に酔芙蓉が模様取られた襦袢は、隊長の伽の相手のときに
必ず着てくるようにと言いつけられているもの。信じられないかもしれないが、この人がくれた物だ。
如何して酔芙蓉の柄なのだろう?そんなに移り気に見えるのだろうか、と
貰ったときには小首を傾げたのだが、単純に紅い着物を乱す僕を見るのが楽しいらしいと
そう気付いたのは、幾度目かの夜が終わった後だったような気がする。
伽の最中は霊圧を抑えずに交わる為、部屋の中の明かりは一切つけない。
霊圧の渦となるこの部屋は、隊長専用室の一室に設えた場所だが、
調度品は必要最低限…其れこそ布団と行灯しか置いていなかった。
その行灯も霊圧に倒されたりしたら事だし、最中に其れを直す余裕などこの人はくれない。
「あァ、弓親…明かりはいい。来い」
不意に呼ばれ、はい、と招かれるまま踵を返し隊長の前に座る。
節立って筋張った硬い手で、ぐ、と右の手首を掴まれ、目線の高さに持ち上げられる。
其処には平素、僕が布で覆い隠す理由がはっきりと現れていた。
満足そうに笑みを浮かべる隊長の視線に、何処か気恥ずかしくなって、視線をそらした。
「そうやってテメェは、時折生娘みてぇな顔を見せる…なぁ、俺に何度抱かれたんだ?」
「ッ……そんな…」
捕まれた右の手首に浮き出ているのは、細かく彫り込まれた、幾パーツもの骨を繋いだ手枷。
くいと顎を掴まれ顔を上げさせられれば、真っ黒な骨の首枷が僕の首を彩っていた。
特殊な時のみ現れる白彫りは、隊長の命で彫りこまれたものだった。
興奮に伴って浮き上がるのではない。
彫りこまれた枷が浮き出る条件はたったひとつ。
隊長の霊圧を浴びること。其の濃さに応じて、枷は徐々に黒さを増す。
傍に寄れば寄るほど。隊長が霊圧を開放すればするほど。
其れは絶対の”枷”であり、所有物の証。
更木剣八という存在から逃れることの出来ぬ、戒めであり契り。
「…よし、回復したな?」
え、と問い返すような言葉だけ発して、答える間もなく押し倒されて。
切りそろえた髪が布団に遮那と散らばり、弧を描いた。
息が詰まるほどの深い口付けに思考を奪われて、白い肌を露にされて。
「……まさか…まだ、するんですか?」
「テメェこそまさか…あれで終いだと、思ってんじゃねェだろうな?」
漆黒に浮き出た首枷を舌で嬲られ、甚振られた身体が熱く疼く。
彫られた枷を責められる度、白彫りを施されたあの時に囁かれた言葉が、頭の奥で蘇る。
”俺に仕えろ。死ぬまで…いや、死ぬことは許さねェから、永劫にだ”
永遠に外れることのない、手枷と首枷に戒められて
貴方愛しと傍で啼く
永劫の刻を貴方のモノとして生きていく
数え切れぬ程喰われながら
<了>
拍手を頂いた方と澪さまから剣弓関係のお言葉が出ておりましたので(笑)
弓の首と手首の布を題材にしながら、女の子弓で剣弓。
剣弓はね、茶仲間の彩守さんの思う剣八のような剣ちゃんを書きたいと思いつつ。
カッコイイんだよなぁ、時折語る言葉の重みとか懐の大きさとか!ドSだけど(笑)
荒々しく壊すような、でもそれが愛し方で、弓も其れを受け入れてるといい。
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