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三条琉瑠@秘姫堂のHP兼ブログ。BLEACHで弓受で徒然なるままに。 新旧十一番隊最愛。角弓・剣弓・鉄弓などパッションの赴くままに製作中。パラレルなども取り扱い中。 ※お願い※yahooなどのオンラインブックマークはご遠慮くださいませ。
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三条琉瑠
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非公開
自己紹介:
明太子の国在住の社会人。
小咄・小説を書きながら細々と地元イベントにサークル出していたり何だり。
弓受なら大概美味しく頂けます。



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ニコペコ/nico peco様の
★角弓スキさんに13のお題★をお借りしました。



「まぁ、そういうわけで」

 拍手を止めた綾瀬川が、憎らしいくらいの笑顔で俺に向き直った。
既に無視を決め込んで頬杖をついたままの俺の目の前にぴっと立ち。

「じゃあ早速、やろっか?」
「”じゃあ”の繋がりが全然解らねぇよ。接続詞の基本に立ち返りやがれ」

 俺の受難と言う名の惨劇の幕が、上がったわけだ。


【題1.13センチ。】(予告編をご覧の上どうぞ)


 ちょっと準備してくる、と言って奥の部屋に引っ込んだ綾瀬川が、顔を見せた。
にこっと満面の笑みで立ちポーズを決め、ご丁寧にくるんと回って見せてくれた。

「どう?」
「…どう、って……何も変わってねぇよな?」

 頭の先から足元まで見て出てきた返事は、正直コレ。
一体どこが、草鹿いわくの『ゆみちゃんとつるりんのじゅうさんせんちを何とかしようの会』の活動なのやら。

「ろっきゅんあさはか~!ちゃーんと変わってるよぉ!」

 随分手厳しい言葉だな、オイ。
俺の隣でぶーぶーと抗議の声を上げる草鹿の声に頭を痛めつつ、
もう一度俺は綾瀬川の全身をじっと見る。浅はか呼ばわりは、頂けねぇ。
何が変わったというのか。それがぱっと解るにはあれか、コイツらが言うところのオトメ心が必要なのか。
 …ふ、と。上から下までの視線が三往復しようかというところで。
俺の目は、微細な間違い探しを見つけて、思わずがたっと席を立ち上がる。
 一歩、二歩、と綾瀬川に近付いて、違いが明白になる。
普段より少し、目線が高い。

「……何履いてんだ?」
「気付いた?あんまり違和感ないでしょ?」

 ふふん、と何故だか綾瀬川は誇らしげに笑って、胸を張った。
貴婦人のドレスをそうするように袴をちょいとつまみ上げ、綾瀬川の足元が露になる。
俺が人目で見抜けなかった理由…ぱっと見、コイツが普段履いている草履と区別がつかなかったモノ。
 …どこかで確かに見たことがあるんだが、コレは何だ?
……というか、何だか、思い出せないほうが幸せな気がしてきた。
いや、思い出すといらん記憶やらを引きずり出しそうな気がした。

「ネムちゃんのミュールを借りてきたの!」
「ね、うちの副隊長凄いでしょ?もー、部下思いなんですから!」
「とーぜんだよっ★ゆみちゃんの幸せを、同じオトメとして祈ってるんだもん!」

 バチコーン★とウィンクをしながら指をぴっと立てる草鹿。
ものすっごい笑顔でくねっとしつつ草鹿を褒める綾瀬川。
いや、それはさて置き、だ。今何て言った?何を借りてきたって?

 よりにもよって”あの”涅ネムの履物を、わざわざ”こんなコトのため”に借りてきたって?

「…なぁ草鹿。涅隊長に…見つからなかったか?」
「うぅん?だって貸してくれたのマユリさんだもん」
「……俺、今ならお前を駄目な方向に尊敬できる自信あるぞ」

 一体どんな顔して、どんな言葉で、貸してもらったんだろうか。
ちょっと想像してみたが、何だか開いてはいけない扉を開きそうな気がしたので、強制終了。
理由を全部話した上で借りてこれたなら…駄目尊敬決定だ。

「別にそれでいいんじゃないか?違和感そんなにないし」

 おおよそ3cm背の伸びた綾瀬川を見ながら、腕組みをして言ってやった。
溜め息交じりなのは流せ。正直、俺は早く解放されたい。
俺の其の言葉に気を良くしたのか、綾瀬川は今にもスキップしそうな勢いで数歩跳ねる。
 ふ、と俺は思い出して、早く飛び出していきたいだろう其の背中に、聞いた。

「なぁ、綾瀬川…お前、射場さんと並ぶのも嫌なのか?」

 確か斑目と射場さんの身長は同じ筈。
それならと聞いた俺に、綾瀬川は心底不思議そうな顔で振り返って。

「なんで?」
「いや何でって…13cmの差が嫌なら嫌じゃねぇのか?」
「別に?鉄さんは鉄さんじゃん」

 どうして射場さんは良くて斑目は駄目なのか。
そこはアレか、もしかしてオトメ心のみぞ知るゾーンなのか。
…気付かなきゃ良かった。多分そうだぜオイ。
 
 まぁ、何はともあれこれで帰れる。
綾瀬川の背中を見送ってそう思った俺ってやっぱり浅はかだったんだな、と。
思い知ったのは、直後のことだった。



「……で、手合わせして派手にすっ転んでオマケに馬鹿にされた、と」

 お前馬鹿だろ、と追い討ちをかけなかったのは、ちょっとだけ俺の優しさだ。
死んだ魚のように机に突っ伏したままぐったりと動かない綾瀬川。
その頭を草鹿がよしよし、と撫でて慰める。何つーか、凄いレアショットなのは間違いないんだけど、な。

 結局ミュールを履いて斑目に会いに行った。そこまでは良かったらしい。
だが戦闘バカの斑目に付き合わされて手合わせになり、
爪先から踏み込んだ瞬間、バランスを崩して派手に前のめりに突っ込んで。
後はこの様子から推して知るべし、だ。

「だって…一角ってば”そんなツッカケ履いてるからだろ”とか言うんだよ…?」
「親父かアイツは」

 今頃ミュールをツッカケとか聞いたことねぇぞ。
アイツの頭の中ではミュールもサンダルもツッカケも同じものなんだろうな。間違いない。
取り合えず作戦失敗ということで解散していいものか、と
茶を啜りながら虚空を見上げていた俺の耳に、草鹿の元気な声が届いた。

「ゆみちゃん、元気出して。大丈夫だよ、あたしがまた借りてきてあげる!」

 ね?と満面の笑みを見せる草鹿。
その自信は何処から出てくるんだろうか。そんなちっちゃな体のドコから。
そんな草鹿が俺のほうを向いて、もう一度、ね?と笑みを見せた。
 ……いや、本当に何となくなんだがな。
嫌な予感は当たるモンだって、最初に言い出したのは誰なんだろうな。



「かーなーちゃんっ!お願いきいてー!」

 元気な少女の声が、九番隊隊舎の廊下にこだました。
その声に、部屋の主が穏やかな笑みを浮かべながら障子を開き、
背の高いその身を屈め、小柄な少女と同じ高さに視線を落として。

「やちるちゃん…今日はどうしたのかな?」
「あのねっ、かなちゃんじゃないとできないお願いなの!」
「そう…私でよかったら…どんなお願いなんだい?」
「あのねあのねっ、かなちゃんの靴を貸してほし

「人の隊の隊長になんつー下らないお願いしようとしてんだ草鹿ー!!!」

 置いてけぼりにされた十一番隊隊舎から此処まで、恐らく最短記録で走り抜けただろう。
得意の歩法を惜しげもなくフル活用した俺の身体は、残像も残らぬ速さで此処まで来て。
大声を出した後ぜぇはぁと息を切らす俺を不思議そうに見遣る東仙隊長。
そんな間にも、草鹿は話を進めようとしやがった。

「かなちゃんのお靴!うちのゆみちゃんに貸してほしいの!」
「ゆみちゃん……もしかして、綾瀬川君のことかな?」
「いや、隊長ッ、聞かないでいいですよ…も、下らないことですから…」

 我が隊の尊愛する隊長は、優しくて、人が良くて…ちょっと、天然だ。
そんな隊長が押し切られたら嫌という筈ない。断言出来る。
隊長を守るのも副隊長の役目と言うなら、俺は何が何でも隊長を守らなくてはならない。
つーかそんな下らない会に隊長まで巻き込めるか!
きっと隊長のことだから、何があったどうしたと楽しそうに嬉しそうに狛村隊長辺りに話して、
同席している俺が何とも言えない目で見られるんだ…それは勘弁こうむりたい。
 平素がそうだってのに、これ以上面倒増やしてなるものか…!

 そんな俺の騎士精神は、草鹿の言葉で容易く崩壊を迎えたのであった。

「お願いっ!ゆみちゃんのしあわせのためなの!」
「…綾瀬川君の、しあわせの、ため…?」
「そう!そしてそれはね、かなちゃんにしか出来ないことなの…お願い!」

 うるうるっと瞳を潤ませて、胸の前で手を組んで、真摯にお願いする草鹿。
しかも言葉はことごとく隊長のポイントを突きやがった。
隊長が…優しくて人が良くて、疑うことを知らないような超のつく天然のこの人が、
そんないたいけな少女の願いを快く聞かないなんてコト、ありえない。
 あぁもう何ていうか草鹿を見る顔が嬉しそうだ!
そりゃそうだろう、人の幸せのお手伝いを出来るんだ。
普段から七夕の短冊に”世界平和”をお願いするような人なんだ。
皆の幸せを願ってやまない人だし、その為には何をもいとわない人だし。
そんな所を心底尊愛しているから、俺はこの人の副隊長で居たいと思う。

 騎士が幾ら頑張っても君主が自ら無血開城しちゃった場合ってのは、
忠誠心高らかな騎士はどうしたらいいモンだかな?



「有難う、檜佐木副隊長。わざわざ持ってきてもらって」
「礼は言い。つか言うな、ムカつくから」

 あのままだとこの場所まで来そうな勢いだった東仙隊長を何とか説得して、
結局俺が隊長の靴を持ってくることで収まった。ナイス、俺。

「言っとくけど汚したりするなよ?折角隊長が貸してくれたんだからな?」
「そこまでモラルない人間じゃないよ…失礼だなぁ」
「お前の知るモラルと俺が知る世間一般のモラルには隔たりがあるように思えるからな、念のためだ」

 慣れない手つきでブーツを履く綾瀬川に、俺は冷ややかな視線と言葉を投げた。
そもそもお前にモラルがあるというのなら、こんな事に俺を巻き込むんじゃねぇ、と、
悪態ついてやろうかと思ったがそれは疲れるだけのような気がして、言葉を飲み込んだ。
 やがて真っ白なブーツに足元が包まれると、よし、と一声かけて綾瀬川は立ち上がった。
先程よりもまた、身長の差がそれだけでゼロに近付く。

「結構これ高いね…何センチくらいあるんだろ、底」
「あー…確か6cmくらいって言ってたな、隊長」
「6cmかぁ………」
「…何だよ、人の顔じっと見やがって」
「ブーツを抜いでも自分より高い人が好きなんて、君、かわいそう…」
「激しくほっとけ!次ソコに触れてみろ、蹴倒すぞ!」

 かわいそうな目で俺を見るな。
人の傷口を爪先でぐりぐりっと抉った上に塩を塗りこんでくれる言葉が痛ぇんだよ。
自分のこめかみに青筋がぴしりと立つのを感じ、やっぱ一発蹴り入れてやろうかと思ったとき。

「おー、弓親お前こんなトコに居た…って何だ、副隊長と檜佐木も一緒かよ。何してんだ?」

 廊下を通りかかった斑目が、入り口から顔を覗かせた。
何も知らないっつぅのは幸せだけど罪でもあるよな、と大仰に肩を竦めて別に、と返して。
綾瀬川は明らかに嬉しそうな笑みを浮かべ、ととっと斑目の傍に寄った。
視線がいつもより高いので上機嫌なのだろう、くるくるっと舞うようにステップを踏んでは
近寄り、すれ違うようにして、横に並んだり、と。
 有頂天って今の綾瀬川のためにあるような言葉だよなぁ、と目のやり場に困って横を向くと、
草鹿がにまーっと嬉しそうな笑顔を浮かべていた。

「いーっかく、もしかして、探してくれてた?」
「イヤ、そういうワケじゃねェけどよ。お前今日様子おかしいな…って、お前何してんだ」
「え?解る?解っちゃう?」

 うきうきっと満面の笑みを浮かべて綾瀬川は斑目の目の前でストップした。
あれで普通に受け答えしている斑目を、俺はちょっと尊敬する。
俺ならきっと、拳叩き込んでると思う。浮かれすぎていっそ阿呆くさい。
 はぁーっと深い溜め息をつきつつ事の顛末を見守ってると。
斑目が、綾瀬川の肩を数度ぽんぽん、と叩き、うん、と一人何かを頷いた。

「脱げ」
「え?!…や、やだなぁ一角こんなトコで脱げなんて大胆…」
「靴脱ぐのが大胆か?いいから脱げって。調子狂うしよ」

 多分、今の俺って鳩が豆鉄砲食らったような顔してるんだろうな。
でもそれは俺だけじゃなくて、綾瀬川も、ついでに草鹿も。
総唖然状態の俺たちに不思議そうに眉を顰めながら、斑目が言葉を続ける。
俺は思った。コイツきっと、天然のタラシなんだろうなぁ、と。

「つーか、肩に手ェ置きにくいし、回しにくいし。お前じゃねェみたいで落ち着かねェから」



「お帰り檜佐木…あぁ、わざわざ靴を持ってきてくれたのかい?」
「えぇ、綾瀬川にここまで来させるのも何だったんで…」
「済まないね……どうだったかな、綾瀬川君は」
「あぁ、伝言たまわってます。”本当に有難う御座いました。おかげでしあわせになれました”と」
「そう…良かった……」

 ”13センチの嬉しさを再確認できたのでしあわせになれました”なんて言える筈もなく。
嬉しそうにふわりと微笑む隊長に、俺はそれ以上の言葉を出すことは出来なかった。


 綾瀬川、俺の時間と苦労、利子つけて返せ。

<END>
角弓で、さりげに修要です(笑)
やっちの”ろっきゅん”呼びは、ほっぺのアレが由来で。
ちょっとハイテンションでオトメなゆみちで書いてみました。
13センチって結構ありますよね。ほぼ理想のカップル身長差じゃないか…!
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