誰と、誰が、いつのどこで、何をする。
一角と、弓親が、現世のマンションの一室で、一日かぎりの新婚生活。
<いつどこはにかみ 角弓 2>
「おかえりなさい、ご飯にする?お風呂にする?それとも離婚?」
「早ぇよ」
新妻の三つの神器なピンクのフリルエプロンに笑顔に三つ指。
これだけ揃えたにも関わらず、笑顔の弓親が吐いた言葉はお約束からは程遠いモノだった。
これまたお約束とばかりに似合わないスーツを着た一角は、靴を脱ぎながらしっかりツッコんだ。
現世のどこにでもありそうなマンションの一室。
きちんと整えられた室内には所々に花が飾られており、ドコからどう見ても暖かな新婚家庭、だった。
「つーか何だこの服、すげェ動き辛ェ…現世の連中はこンなモンで仕事してんのかよ」
鞄を弓親に預けた一角が、堅苦しいスーツの上着をばさりと脱ぎ、食卓の椅子にかけた。
動きやすい軽装を好む一角には、どうにも暑苦しくて合わないようだ。
預かった鞄を箪笥の前に置きながら、その様子に弓親は思わずくすくすと笑みを浮かべる。
「そりゃあ、それは現世のデスクワーカー用の服だもの。一角に合わなくて当然でしょ?」
「ったく、何だって俺がこんなカッコしねェといけねぇんだっつの」
「しょうがないよ。そういう指令なんだし」
どうも今回は、ごく一般のサラリーマン新婚家庭、らしい。
ぶつくさ言いつつネクタイの結び目に指を入れしゅるっと乱雑に緩めると、一角は食卓についた。
「じゃあ、ご飯にする?」
「んにゃ…オーイ、ちょっと来い」
台所に向かい始める弓親を呼び止めて、一角はちょいっと手招きをした。
食事の準備をしようと簡素にアップにした髪から手を離し、何?と不思議そうに弓親は身を寄せる。
柔らかな色のTシャツと短パンとスリッパ、という簡単な姿が、一角の目の前に来たその時。
ひょいっ。
「ッ!!?な、何、なにっ?!」
一瞬。本当に一瞬だった。
所謂これも新婚生活のお約束の一部。旦那が奥様をお姫様抱っこ。
一角は足で行儀悪く襖を開けると、薄暗い部屋のベッドに弓親を放り投げ、圧し掛かった。
「ちょ、っと、本当に何なのさ一角ッ!」
「ウルセェ。俺ぁとっととこンな下らねェこと終わらせてェんだ!」
「だからって、ちょ…一角の馬鹿ッ!!そんなのココに書ける訳ないじゃない!このブログ終わらす気!?」
「あァ?知るかンなコト!新婚生活すりゃ終わるんだろうが!とっとと夜の営みで終わらせンのが一番だっつの!」
じったばったと柔らかなベッドの上で暴れる弓親の手首を、がしっと押さえて。
半分ヤケになっている一角が、サッサとコトを済ませてしまおうと体重をかける。
きしっとベッドのスプリングが軋み、その重みに弓親が眉を顰めたのを見て、
一角は押さえていた手首を片手に束ねると、開いた手で弓親の短パンに手をかけた。が。
ば、きッ!!
「…っく、てめッ……脇腹は反則だろうが…!」
「一角、サイッテー…」
渾身の奥様キックが脇腹に炸裂!
夜のプロレスは幕が開く間もなく1RKOで決着だー!
…そんな実況をしたくなるような光景が、色っぽさもへったくれもなくなったベッドの上で、
今まさに間違いなく現在進行形で、展開されていた。
はー、はーっ、と息を荒くし涙目で後ずさる弓親は、枕を手に持って防御体勢に入る。
暫く悶絶していた一角が脇腹を押さえながらゆらりと立ち上がったとき、2Rのゴングが鳴った。
「テメェ…頭に来た。ゼッテェ泣かす…!」
「やってみなよ…絶対やらせないんだから…!」
コレ何てドメスティックバイオレンス?
そんな疑問も空しく、痴話喧嘩というには余りにも力の強すぎる、いっそ取っ組み合いが始まった。
ていうか純粋にバイオレンス。
<この番組はお詫びの提供でお送りしました>
マッドでサイコなモノだけなのは忍びないので、お詫びショート。
寧ろお詫びショートにお詫びしなくてはならないようなオチでゴメンナサイ(笑)
期待していた方ゴメンナサイ。でも書いていた本人は本気で楽しかったです(笑)
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