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三条琉瑠@秘姫堂のHP兼ブログ。BLEACHで弓受で徒然なるままに。 新旧十一番隊最愛。角弓・剣弓・鉄弓などパッションの赴くままに製作中。パラレルなども取り扱い中。 ※お願い※yahooなどのオンラインブックマークはご遠慮くださいませ。
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プロフィール
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三条琉瑠
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非公開
自己紹介:
明太子の国在住の社会人。
小咄・小説を書きながら細々と地元イベントにサークル出していたり何だり。
弓受なら大概美味しく頂けます。



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※恋次と弓親がメイン(Notカップリング)。旧十一番隊の頃の話。


 何故花火は花火という名前なのか。

 きっと花のように散って戻らないからだと思う。

 ほら、ね。美しいだろう?


<打ち上げ花火、横から見るか下から見るか>


 今年の花火は何処に見に行けばいいか、と相談していた縁側で。
心地良く冷めた茶を頂きながら、恋次は確かにそうかも、と頷いた。

「つーか、弓親さんって基本的に儚いモノ大好きですよね」
「まぁね。一時だからこその美しさ、というのかな?」

 夕日と言うには色の薄い黄色の空が姿を青くする下で、
明朗と言うのが相応しい楽しげな声で、弓親は同意を唱えた。
自分にとってトラブルメイカーに他ならないが優秀な先輩に、
はぁ、と曖昧な返事を返し、恋次はもう一口、冷めた茶を喉に流し込む。
 日が落ちきれば遅番が始まり、職務を終えた一角と射場が来ることになっている。
今日の縁側茶会の議題は夏に向けて、と一角から聞いたのは昨日だったか。
上位席官四人が顔を突き合わせる隊舎の縁側は、時に遊び場、時に話し場になっていた。

 遅春の涼しい風が、夕暮れの空を撫でる。
まだ仄明るい空に夏の夜の花火を思い浮かべ、恋次は目を細めた。
夏の一夜に流魂街の花火師が上げる花火は、霊央院時代からの娯楽のひとつだ。
十三隊に入ってからは宴会も相まって、毎年の風物詩になっていた。
 そして花火が上がるたび、いつかもう一度、”一緒に”見られればいいと思うようになった。
同じ花火を見上げているだろう、違う場所に居る幼馴染と。


「そういえば火で思い出したけど…ねぇ恋次」
「あ、ハイ。何スか?」

 ぼうっと目を細め空を見上げていた恋次は、声にはっと振り返った。
その様子には気付かないかのように、弓親は淑やかに、楽しそうに笑みを浮かべる。
薄暗くなるこれからの時間の為に用意した置き行灯から蝋燭を取り出し、火を入れて。

「蝋燭って…いつ、一番激しく燃え上がるか知ってる?」

 蝋燭越しに照らされた弓親の笑みに、何処か怖気が背中を走った。
台ごと胸の高さに蝋燭を持ち上げた弓親は、艶やかに笑んでいて。
戦いの最中のような相手の笑みに、思わず無言で首を振った。
知らなかったのもあるが、まるで、エモノを狩るその眸が怖くて。
 時々思い知らされる。
どんなに淑やかでも、この人も、戦いを好み喰らうケモノなのだ、と。

 ふぅ、と。弓親の唇から零れた吐息が、蝋燭の火を揺らめかせ、消した。

「――…其れはね、燃え尽きて消える最後の一瞬……ね、儚くて、美しいだろう?」

 笑みは穏やかで淑やかで…いつも見る、弓親の笑みに戻ってはいた。
だが、先程までその怖気に当てられて心臓の鼓動を早くした恋次は、
はは、と軽く誤魔化すように笑い、引きつった笑みを浮かべるのが精々だった。

「あー…それなら、全部儚ければいいっスね」

 そう言って、湯飲みに残った茶を一気に流し込んで、恋次は笑って弓親を見た。
きょとん、と。
その大き目の眸が不思議そうに揺れているのに気付き、恋次は思わず首を傾げた。
如何したのだろうか、と思っていると、弓親はふる、と首を振り。

「そうでもないよ。だって…美しさと幸せは、イコールではないのだから」

 空を僅かに見上げ、はっきりと、そう言った。

「……そういうモンっスかね?」
「そういうモノだよ。いつか解るよ、きっと」


 頭をぼり、とかき、恋次が如何しようかと思っているところに、どたどたと賑やかな足音が響いてきた。
方向を見遣れば、職務が終わったのであろう一角が歩いてきているところであった。
片手に、何か風呂敷包みを持って。

「お疲れ様、一角。夕餉は?」
「おう、さっき食った。つか射場さんはまだ来てねェンか?」
「お疲れ様っス…まだ、来てないっスね」
「ンじゃあ丁度いいわ。恋次、お前相手しろ」

 どさっと腰を下ろした一角が包みを解くと、薄い座布団と花札が姿を現した。
最近十一番隊きっての戦闘狂の先輩二人の間では花札が大流行しているらしく、
勝ったの負けたのどんだけ払っただの、恋次自身もよく耳にしていた。

「一角さん、俺の財布ごと巻き上げる気っスか…?」
「解ってりゃ話し早ェな。ンじゃすッぜ?俺親な」
「解ってることがすげぇ問題だと思いますソレ…!」
「あ、じゃあ僕もしたい」

 行灯に火を入れていた弓親が、にこ、と笑いながら入ってきた。
一角が手際よく札を配れば、既に敵前逃亡は死と同意と悟り、溜め息をつきつつ恋次も腰を落ち着ける。

「つーか弓親、テメェの上がる手は偏ってるから読みやすいンだけどな」
「あ、ソレ言えてますね。ある意味大物狙いというか何というか」
「カス札集めて上がるばっかりの恋次にはとやかく言われたくない」
「何でっスか!上がりは上がりじゃないッスか!」
「バッカだなお前、男ならもちッと上狙えよ。俺みてェに」
「一角もたまに赤タン連発するから同じだよ。ところで今年の花火、どの辺から見る?」
「あー、俺横からがいい。やッぱ下からだと首凝るしよ」


 儚さと限りあるモノを美しいと好む先輩の様子をちらりと見て、恋次は思った。
この限りない今をとても楽しんで愛していそうな笑みに、あぁ、と頷く。

 確かに、幸せは美しいばかりではないかもしれない。
 だけど同時に、幸せは花火のように、儚くはないのだろう、と。

<終>
旧十一番隊の会話は書いてて楽しいです…!
会話文だけならいつも、ぽんぽん出てくるのですが。
旧十一番隊席官Sの間で、花札は流行ってるといい…!
個人的に弓親は花見酒・月見酒とか猪鹿蝶とか、綺麗な手ばっかり狙いそうで(笑)
恋次は巻き上げられないように、とにかく安い手でも早く上がろうとします。
で、一角は状況に応じて狡く上がったり(笑)
でも一番の博打打は鉄さんだと思います。勝ってようが負けてようが三光以上狙い。
青タン程度じゃあ『こいこい』で更に勝負を仕掛けます。漢だ…!

孔雀はあの美しさでも肉食なのです。
鮮やかな羽根を持つ異質の鳥で、ケモノなのです。
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